- 裁判をする場所は法律で決まっている(裁判管轄)
- 請求金額によって地裁or簡裁が決まる
- 事件の種類によって裁判所の場所が決まる
- 遠い場所にある裁判所で訴えられてしまったら?
裁判をする場所は法律で決まっている(裁判管轄)
裁判所は日本全国に400ヶ所以上設置されています。自分の住んでいる区や市町村に裁判所があるという方も結構いると思います。
ただし、どんな事件でも自宅から一番近い裁判所でやってもらえる訳ではありません。沖縄に住んでいる方が、東京の裁判所に出頭するように求められて困ってしまう・・・といったことも、裁判の世界では珍しくありません。
どこで裁判ができるかは、法律によって決まっているからです。これを裁判管轄と言います。裁判管轄がどこにあるかによって、裁判をできる場所が、自宅から遠くなったり近くなったりします。
そこで、貸金返還請求事件や交通事故による損害賠償請求事件など裁判をする場合を例にして、どうやって裁判の場所が決まるのか、ざっくりご紹介します。
請求金額によって地裁or簡裁が決まる
まず、民事訴訟では、原告がどんな種類の請求を何円ぐらいするのかによって、裁判所の種類が決まります。
例えば、原告が被告に140万円以下のお金を払って欲しいという請求をする場合は、簡易裁判所で裁判をすることになります。
簡易裁判所は全国に438ヶ所あるので、証人尋問などのために裁判所に出頭しなければいけないときに、比較的行きやすいというメリットがあるかもしれません。また、請求する金額が低く、それほど争いが深刻でないことが多いので、基本的に3、4回の期日で裁判が終わることが多く、早く紛争を解決できるというメリットもあるかもしれません。
一方で、原告が被告に140万円を超えるお金を払って欲しいという請求をする場合は、地方裁判所で裁判をすることになります。
地方裁判所は各都府県に1ヶ所ずつ、北海道に4ヶ所置かれており、支部も含めると全部で253ヶ所あります。簡易裁判所よりも数は少ないですが、争いが深刻でない事件は、簡易裁判所と同じように数回の期日で裁判が終わることもあります。
事件の種類によって裁判所の場所が決まる
裁判所の種類が決まると、裁判所の場所を考えることになります。
まず、どんな種類の事件であっても、被告の生活の本拠地を管轄する裁判所で裁判をすることができます。
例えば、お金を貸した相手や交通事故で怪我をさせられた相手が今現在東京の江戸川区に住んでいたら、東京地方裁判所で裁判をすることができるといったイメージです。
次に、事件の種類によっては、被告の生活の本拠地を管轄する裁判所とは別の場所の裁判所で裁判をすることが認められています。
例えば、借りたお金を返す場所を特に決めていなかった場合、民法では貸した人の住所でお金を返さなくてはならないことになっています。
このような場合に貸金の返還を求めるときは、自分の住所地を管轄する裁判所で裁判をすることができます。貸した相手が北海道などの遠くの都道府県に引っ越してしまっていても、自分が船橋市に住んでいれば、千葉地方裁判所で裁判をすることができるといったイメージです。
また、交通事故の場合には、交通事故が起こった場所を管轄する裁判所で裁判をすることもできます。事故の相手が名古屋市、自分が船橋市に住んでいて、船橋市で交通事故が起こった場合、自分から相手に損害賠償請求をするときでも、名古屋地方裁判所だけでなく、より近い千葉地方裁判所を選ぶことができるといったイメージです。
遠い場所にある裁判所で訴えられてしまったら?
このように、裁判ができる場所は事件の内容によって色々です。
自分から裁判をする場合には、どこで裁判をするかを考えることができますが、訴えられてしまった場合には、すでに裁判所が決まった状態で訴状が送られてきます。
その裁判所が自宅からはるか遠い場所にある裁判所だった場合、弁護士を依頼しても、弁護士が裁判所に行くための費用を支払わなければならなかったり、自分自身が尋問のために平日に遠くの裁判所まで行かなければならなかったりします。
そのようなときには、移送申立てといって、裁判の場所を別の裁判所に移してもらうような申立てをすることが可能です。
ただし、どんな場合でも認められるわけではありません。相手が別の裁判所で裁判をすることに同意した場合のほか、色々な事情を総合的に考えて裁判の遅れを避けたり当事者の公平を保つために必要と裁判所が認めた場合に移送が認められます。
また、この申立ては、裁判の期日で一度相手からの主張に対する反論の主張をした後はすることができないので、注意が必要です。