交通事故で使うことができる保険とは?
交通事故による怪我の治療で使うことのできる可能性がある保険には、相手方の自賠責保険や任意保険、健康保険、労災保険、被害者側の任意保険などがあります。
このように複数利用できる保険があるため、どのように使えばよいのかわかりにくいと思われる方も多いと思います。
ここでは、主に、自賠責保険、労災保険、健康保険について、どのような場合に利用するのかを説明していきます。
目次
自賠責保険
すべての自動車に加入する義務があり、被害者に対して最低限の補償をするための保険が、自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)です。
自動車が相手の交通事故では、自賠責保険を使うことができます。
労災保険
労災保険とは、業務上の災害や通勤災害によって労働者が負傷したり病気になったり死亡したりした場合に、労働者またはその遺族に対して保険金が支払われるものです。自動車が相手の事故であれば、自賠責保険から保険金を支払ってもらうことができるのですが、業務上や通勤途中で事故にあったのであれば、労災保険を利用することもできます。労災保険を利用した場合、被害者が医療機関の窓口で治療費を支払う必要はありません。
自賠責か労災保険のどちらを使うのか選択が必要
もっとも、2つの保険両方から保険金を受けとることができわけではなく、労災保険と自賠責保険の支払いのどちらを先に受けるのかを、被害者が選択することになります。ただし、自賠責保険を使った場合でも、労災保険の休業特別支給金(給付基礎日額の2割分)を受け取ることはできます。
労災保険のメリット
過失割合に割合に関わらず全額補償される
自分に大きな過失がある場合に減額されてしまう自賠責とは違って、労災では、自分に過失があったとしても過失相殺されることはありません。自分の過失が70%を超えるほど大きい場合には、労災保険を利用した方がよいといえます。
補償額に上限がない
また、自賠責には、傷害について120万円という限度額がありますが、労災にはそのような上限はありません。相手方が任意保険に加入していないような場合に、自賠責保険を利用した場合には、上限額を超える分の賠償を受けられない可能性がありますので、労災保険を利用した方がよいことがあります。
健康保険
交通事故で健康保険は使うことができるのか?
交通事故による怪我の治療には健康保険を利用できないのでは?と思われている方は多いようです。しかし、交通事故で怪我にあった場合の治療にも、健康保険を利用することができます。
病院によっては、「交通事故なので健康保険は使えません。」などと言われるケースもあるようですが、厚生労働省も、健康保険を使用できるという見解を表明していますので、使えるというのが正解なのです。もし、病院がどうしても健康保険の利用を認めない場合には、転院を検討しても良いかもしれません。
ただし、労災保険が適用された場合には、健康保険を使うことはできません。
健康保険を利用したほうがいい具体的な場合
相手方の保険会社から治療費の支払いを打ち切られた場合
交通事故で怪我を負って通院をしている場合には、相手方の任意保険会社が、その治療費を直接医療機関に対して支払うという対応(一括対応)を行うことが多く、その場合には、被害者は、自分で治療費を支払う必要がありませんので、健康保険を利用する必要はありません。
しかし、保険会社は、ある程度の期間が経過すると、治療費の支払いを打ち切ると言ってくることがあります。保険会社から治療費を打ち切られても、まだ治療の必要がある場合には、一旦自分で治療費を立て替えて通院を継続せざるを得ないことになりますが、その際、健康保険を利用せず、全額自己負担で治療費を立て替えるとなると、かなりの高額な負担になってしまいます。
負担が大きいからといって治療をやめてしまえば、正当な損害賠償金を得られない結果となることもありますので、健康保険を利用して通院を継続すべきであるといえます。
なお、業務上の事故の場合には、労災保険を利用することも考えられます。しかし、労災保険の療養補償給付を受けるためには、労働基準監督署の給付決定が行われる必要がありますが、保険会社が下した打ち切りという判断が誤っていると認められるのは容易ではありません。そのため、労災保険に切り替えることができない場合もあります。その場合には、やはり、健康保険を利用することになります。
相手方が無保険の場合
相手方が任意保険に加入していない場合には、保険会社が治療費を直接医療機関に支払ってくれるというようなことはありませんから、初めから治療費を自分で立て替えて支払わなければならないことになりますので、健康保険を利用すべきです。
自分の過失が小さくない場合
交通事故で受けた損害のうち、自分の過失割合の分は、自分で治療費を負担しなければなりません。自分にも過失がある場合に10割負担で治療費を支払ってしまうと、自分が負担しなければならなくなる金額が大きくなってしまいます。健康保険は、過失割合の大きさに関わらず利用できますので、このような場合には、健康保険を使った方よいです。
交通事故で怪我をした場合には弁護士にご相談ください
このように、保険の使い方ひとつをとっても、複雑でわかりにくいこといろいろありますので、交通事故にあった場合には、なひとりで悩まずに、お早めに弁護士にご相談いただき、適切なアドバイスを受けることをおすすめします。